Challenge to MUSE vol.01 〜いのちあるもの〜 に寄せて

企画について ~イントロダクション~

今まで、KHC Projectでは公募による演奏会を数多く企画してきました。
2019年の1st Concertに始まり、単独演奏会やテレコーラスでの作品作成、合唱祭への参加など、2021年8月現在までに7度の企画を実施しました。そして、それらの企画を通して、学校・年齢・合唱団といった既存の枠を越えた、新たな合唱人の繋がりを作る方法を常に模索してきました。

そんな当団体は、2021年8月で設立3年目を迎えます。

もっと、皆さんと歌いたい。
もっと、色々な人と繋がりたい。
もっと、歌に向き合いたい。

そんな想いを胸に、私たちは今までにない角度から、新たな挑戦を企画しました。

それが、「Challenge to MUSE」です。

「Challenge to MUSE」、直訳すると、「神への挑戦」です。
Muse(ミューズ)とは、ギリシャ神話で音楽や芸術を司る女神の名前です。

昨今のコロナ禍で、多くの合唱団が思うように練習することができずにいます。
団員が集まれない、練習会場が見つからない、学校から活動中止の通達が来た……etc.
集まって歌うことすらままならない状況で強く感じるのは、歌(特に合唱)が持っている、人と人とを繋げるパワーです。久々に練習を再開した団で、何ヶ月ぶりに団員と顔を合わせて歌ってみると、オンラインでは感じ得なかった体温のある繋がりを感じるものです。

だから、歌えるだけで奇跡なのかもしれません。
みんなで声を合わせて、練習ができて、無事に本番を迎えられる。それ以上のことを求めるのは、この状況下では我儘なのかもしれません。

しかし、歌は、誰かに届けるものだとも思います。
一曲一曲に、伝えたい強い想いがある。だから、ああでもないこうでもないと言いながら楽譜に向き合って、その想いを受け取って、歌に乗せて届けていくのが、歌い手に託された最大の使命だと思うのです。

だから、この企画は「初めましての合唱人が集まって歌う」ことの、さらに先を目指しています。それは、「全力で歌に向き合うこと」です。
公募合唱団だからこそ生まれる、今ここにしかない歌。それを、せっかくならば神様にまで届けたい。それぐらいの気持ちで、全力で歌に向き合いたい。

繋がりを越えたところに、何かがあると信じて───

人が集まることすら難しい今。この挑戦も、もしかしたら上手くいかないことがあるかもしれません。
それでも、歌を愛する人と出会い、声を重ねて、歌を創っていく喜びを、誰かと分かち合っていきたいと強く思っています。

皆様の参加を、心よりお待ちしています。
一緒に、KHC Projectで歌いましょう。

テーマについて

初回に選ばせていただいたテーマは「いのちあるもの」です。
このテーマを選んだ背景には、間違いなく新型コロナウイルスという大きな存在があります。

最初に申し上げますが、芸術を「日常を忘れさせてくれる存在」として楽しみたい人間の一人としては、何でもコロナ禍に掛け合わせるのにはモヤモヤを感じてもいます。しかし、それを作り上げるのが日常を生きる(ましてや多数の)人間であることを考えると、このテーマと私たちの生きる日々を完全に切り離すことはできないと考えました。

どのニュース番組でも、毎日のように感染者数と症状の恐ろしさが流れます。
流れてくる情報を見ては、小さなウイルスに苦しめられている人間の脆さを感じざるを得ません。
「死」という言葉が、なんとなく日常の手前まで近づいているような、そんな感覚すら覚えます。

このような状況で、生きている私たちの視点から改めて「人間」を見つめてみることは、新しい価値を持っていると思うのです。
そのような経緯もあって、初回となるVol.1のテーマを「いのちあるもの」に設定しました。

そして、今回の選曲にあたっては、信長貴富先生の無伴奏合唱組曲を二作品選ばせていただきました。

1st Stageは『無伴奏混声合唱のための「After…」』です。
この組曲は、一人の人間に真正面から正直に向き合うような組曲です。
喜びだけではない、絶望、悲しみ、死、命といった、人間の生きる姿を未来に向かう言葉で描いた詩が、音楽を通して解釈されたとき、そこには何が生まれるのでしょうか。

2nd Stageは『無伴奏混声合唱のために「廃墟から」』です。
この組曲では、人間という生き物それ自体が、痛々しいほどのリアリティを持って描かれます。
「人はなぜ争うのか」という終わりのない問いに、この組曲を通して、少しでも近づくことができたなら……。戦いの前であまりに無力な一人の人間にも、そんな願いが湧いてきます。

これら二つの組曲は、勿論コロナ禍以前に作られた作品です。しかし、2020年以降、思うような生活を送れずにやきもきし、テレビ越しでも日常でも「いのち」を感じる機会が増えた私たちの目に、これら二つの作品はまた違うように映るのではないかと思います。
ぜひ皆さんと一緒に、「いのちあるもの」というテーマと最後まで寄り添い、これら二つの作品を歌い上げられれば嬉しいです。

さいごに

この二つの作品は、信長貴富先生の作品の中でも高難易度の作品であり、無伴奏である上、多くの声部を必要とします。そのため、音源の配布など可能な限りのサポートは行いますが、それでも完成には相当の困難が予想されます。

ただ、指揮者の真田さんを始め、この場に集って下さる皆さんの想いと歌声があれば、演奏はもちろん、そこに至る練習までもきっと素晴らしい時間になると思っています。
少ない練習回数ではありますが、どうぞよろしくお願いします。

KHC Project 副代表
風越 遥

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Challenge to MUSE vol.01 〜いのちあるもの〜 参加要項